「覚技って、どういうものなんですか?」という質問をよく受けます。
なので、ここで一度、覚技についてお話をしておきたいと思います。
覚技は一言でいうと、「一瞬一瞬自分とともにいる技術」です。
音楽、武術、心理療法、ボディワークとやってきたぼくの経験の中から生まれた技です。
覚技を理解していただくために、少し長くなりますが、
まず覚技が生まれた経緯から知っていただくことにしましょう。
◆ぼくはもともと音楽の演奏家でした。コンサートでは、
同じ演奏をしているつもりでも、よかった、良くなかった、とうい違いがよく起こります。
「それはなぜなんだろう?」
テクニックや気持ちも大事だけれど、
それだけじゃないなにかが影響している、と感じていました。
仕事は順調で今から思うと気が遠くなるほど忙しい日々を過ごしていましたが、
ある日コンサートで移動中に、後ろから追突されて、背中を激しく痛める事故にあいました。
その後、しばらくは後遺症でよろよろしか動けなくなってしまいました。
◆これが音楽活動に大きな支障をきたしたことをきっかけに、
からだの動きが大事だと気づき、体術としての武術を習う道に踏み込んで行くことになります。
その武術での経験を通してだんだんと演奏にはからだと意識状態が
とても大きく影響していることがわかってきました。
そして、自分が追求したいものが「体や意識」に大きく変化していったのです。
◆その後、いろいろなボディワークや心理療法を学んでいくことになりますが、
感情と体の関係についてより深く、体験をとおして知ったのは、
吉福伸逸さんというセラピストからです。
彼は日本にトランスパーソナル心理学を導入したことで知られています。
ちょうどぼくが吉福さんのもとで心理療法の勉強をはじめようとしたとき、
吉福さんは「統合失調症といわれる方」に、きちんと対応できる人間を
日本でも育てたいという活動を始めていました。
そこで僕もだんだん、統合失調症の方の対応を手がけるようになりました。
※「統合失調症といわれる方」と書きましたが、「その人の状態に名前をつけたくない」という
吉福さんの考えにぼくもその通りだと思っています。ただここでは話をわかりやすくするために
あえて「統合失調症の方」としました。
◆統合失調症の方は独特の世界にいてコミュニケーションがとりにくいのが特徴です。
ひとりひとり表現の仕方が違うので、「こういうときはこうすればいい」という
マニュアルがありません。
しかもかれらはすごく敏感な感受性を持っているため、言葉だけで
うまくコミュニケーションをはかろうとしてもうまく通じないのです。
だから「彼らとどう接していいかわからない」とよくいわれますが、
対応の仕方としては「ちゃんと関わりながらも巻き込まれないでいること」、
これが一番の基本だと思っています。
対応のノウハウ以前に、こちらの気配や「存在の仕方」のようなことの方が大切なんです。
この意味で、いままで音楽や武術をやってきたことが、
ぼくにとって統合失調症の方の対応にとても役に立っていることがわかりました。
◆このように統合失調症の方への対し方について自分なりにコツをつかんできたころ、
これまで、その時々の自分の予感にしたがってやってきた音楽、武術、心理療法、
ボディワークなどがようやく一つにつながりました。
自分の中で、ぼくが目指していたのは「注意の行き届いた自然体」であり、
大切にしてきたのは「ダブルアテンション」だったということがわかったんです。
この二つの言葉が、覚技のキーワードになりました。
それぞれの言葉の意味については後半で。
To be continued・・・!
覚技とは何か?【後編】はコチラ⇒
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